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ss ファミリーポートレイト

メモ書きにss。
動画にするかもしれませんが。
弟はどんな顔だっただろうか?


弟が死んでもう随分経った。
いつも隣にいて、いつも笑っていたあの子がいない生活にも慣れた。
それはつまり、毎夜の両親の喧騒にも慣れたということだ。
私は部屋に篭り、ヘッドフォンを耳に当てて音楽を聞く。目を閉じて、自分の中に潜る。

弟が死んだのは、つまるところ私の家族の誰の所為でもない。
それなのに私の家族はここまで歪になった。
私の両親は、弟の遺品を全部処分した。使っていた机、着ていた服、そして、写真も。
仏壇にも写真はない。あるのは位牌だけという徹底したものだった。
思い出すと悲しくなると思って処分したんだろう。なんて馬鹿なことをしたのか。
そんなことをしてもすぐに記憶から消せるわけはない。
何より、思い出したいとき、手がかりがなくなるのだ。
私の家族の真の崩壊は、そこから始まった。

弟の顔をきちんと覚えていたのはいつまでだろうか?
今はもう記憶があいまいだ。
何か手がかりがあればすぐに思い出せる。
同じ年頃の子の中に混じっていても、私は弟を指摘することができるだろう。
何かあれば。


「千早、チェック頼む。俺は会議があるからよろしくな」
プロデューサーは私を視聴室に残して出て行った。
私はプロジェクターにDVDを入れて再生する。
内容は少し前のライブ映像を販売用に編集したもの。
ライブDVDは音響が悪いのであまり好きではないのだけれど、コレも仕事の一つ、と割り切ろう。

特に感想はない。ライブの反省会はプロデューサーとしている。そのときに自分の歌っている姿も見ているから。
一度見た映像を、二時間も見るのかと辟易して、
ある一場面に私の目は釘付けになった。

観客席をカメラは写している。その視点の先、その場にいるのは不釣合いな幼い少年。
弟だった。

私は一時停止を押して、スクリーンに駆け寄る。
ああそうだ。これが弟の顔だ。思い出した。思い出せた。

私は唯一つ残った弟の顔を見つめながら、静かに涙を流した。

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